読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Semio

雑念ブログセミオ

映画『インクレディブル・ハルク』ハルクの動物性とエミルの一途さ

映画 カッコよさ

ストーリーは単純、アクションは迫力があって良い。軍はハルクを追っていて、ハルクは逃げながら治療法を探していて、軍が張り切りすぎちゃって怪物を作りだし、尻拭いをハルクにさせる。

アクションシーンは良くて、軍とハルクが広場で戦うところや、最後の殴り合いも迫力があったし、最初の街中で追いかけっこするところも、土地勘のない隊員が勢いよく走っていたら突然落ちたり、 屋根の上を走ったり、この街でないと撮れない様な映像で面白かった。

 

 

軍(の一部)を悪役として描いているが、軍を悪役たらしめているのが当のハルク(ブルース)であって、他のヒーローものとは質が違う。普通は社会に とっての脅威が敵役になることが多いと思うが、この映画の軍は単純に「ハルクの敵」であって「社会の敵」ではない。勝手に実験をして、ハルク化してしまっ たのはブルースなんだし、変な話、ブルースが出頭すれば済む話、とも言える。(巻き込まれて死んだ人もたくさんいるんだし)

と言っても、別にブルースを悪く言いたいのではなくて、平和に暮らそうとしているブルースを執拗に追いかけている軍は悪いし、それに抵抗しているブルースは別に間違ってはいない。ただ単純な勧善懲悪にはなっていない。

 

 

エミルのかっこよさ

この映画のラスボス:エミル(アボミネーション)はいいキャラクターで、僕はハルクよりもこの人の方が好き。「私は戦士です」という現場主義だが、最近は体の衰えを感じている、というのは共感を呼ぶキャラ設定だし、その後薬を打って力に溺れていくところもいい。

特に広場での戦闘シーンで、ハルクが軍を圧倒した後、手ぶらでハルクの正面まで行き、「それだけか?」と挑発するところはカッコイイ。その後前蹴りで吹っ飛ばされるのは少し笑えるとしても、それでも心が折れなかったのが凄い。この真っ直ぐぶりに心打たれてしまう。

悪役は最初から主人公より強いことが多いが、この映画は逆に圧倒的に強い主人公に対して、悪役がだんだん(薬に頼っているとはいえ)強くなっていくのがアツい。

やはり敵味方関係なく、「一途さ」というのはカッコいい。

 

 

 ハルクの動物性

ハルクが接するのは、ほとんど敵である軍と、恋人のベティだけなので、ハルクがどういう人物なのかがよく分からない。軍には攻撃的、ベティのことは守ろうとするのは分かるのだが、例えば関係ない一般人に対してはどういう態度なのかが分からないので、ハルクがどれくらい凶暴だったり、動物的だったり、 逆に人間的だったりするのかがよく分からない。

敵に対して攻撃的、仲間に対してはやさしい、というのは大体誰でも同じなので、そこだけ観ても 「こういう人なのだな」というのは分からない。

個人的にはハルクはもっと動物的な、野獣的な描き方でよかったと思う。中途半端に人間的なところがあるせいで、周りで巻き込まれて死んでいる人たちに対して、こいつはどう責任を取るのか、という気持ちがよぎらなくもない。飽くまで動物であれば、そういう風には感じない(動物だからしょうがないと感じる)んじゃないだろうか。

ハルクがベティを守るのは別にいいのだけど、訳も分からず本能的に守っている感じにすればいい。それで洞窟でドギマギして、自分の中のほんの少しの人間的なところに戸惑っているようにすれば良かったんじゃないだろうか。

この洞窟のシーンは僕がこの映画で1番嫌いなシーンだ。ハルクがあまりにも人間的で可愛い感じに違和感を受ける。どうしていいか分からずに、ベティのことを少し離れたところから見てるくらいがいい気がする。 それくらいが僕の思うハルクの人間性と動物性のバランスだ。

 

 

そしてラストの戦闘シーン。ここは凄く良かった。重量感もスピード感もあって、 ハルクが吹き飛ばされて着地するときに後ろの車が揺れていたりとか、とにかく建物や車を壊したり投げたり、パワーが凄い。

特に、最後ハルクが鎖で怪物の首を絞めているところ。暴力って怖いなー、と感じた。映画『ノーカントリー』の手錠で首を絞めて警官を殺すシーンのような。なんだか、不気味で怖い感じ。

それまではぶっ飛んだり吹っ飛ばされたり、爽快なアクションシーンだったのに、いきなりこういう不気味な、重々しい暴力になって、ちゃんとハルクの、暴力の凶暴性を垣間見せている。それも結局ベティに止められてしまうのだけど、やめられずに殺しちゃってもドラマの展開としては良かったと個人的には思う。

 

 

この「殺すのを途中で殺すのをやめる」という行為が、ハルク化を中和する薬を投与された後なので、以前より人間性が増していて、ベティの声に反応した、という筋書きな ら納得できる。

なので、その為にはやはり最初の方のハルクはもっと動物的に描いた方が良かったと思う。そうすれば、主人公の目的である「治療」に ちゃんと価値があったと分かりやすいのだが、最初も最後もハルクがあんまり変わらない(対比が弱い)ので、いまいちそちらのストーリーに対する達成感が弱い。

後日談としてブルースがハルクを制御できている様な映像があるが、あくまで後日談なので、ちゃんとストーリー内で解決するようにしてほしかった。